わがまち自慢・
ふくしまプライド。紀行

会津地鶏とは、会津地方にのみ伝わる希少種で、その肉は、風味がよくてうま味が強く、ほどよい弾力が楽しめるのが大きな特徴です。その昔、平家の落人が愛玩用（ペット）に会津に持ち込み広まっていったといわれ、今や全国的なブランド地鶏のひとつとしてその名が知られるようになりました。
会津地鶏のオスは、黒と白と茶、そこに青や緑に輝く五色の羽をもつとされ、 1570年代に伝承された郷土芸能「会津彼岸獅子」の獅子頭に、その黒くて長い尾羽根が使用されてきました。その歴史をたどるとなんと400年以上も前にさかのぼることができ、会津の人々に古くから親しまれてきました。

しかし、一般の鶏と比較して体が小さく産卵数も少なかったため飼育する人も少なくなり絶滅寸前になっていたところ昭和６２年に県養鶏試験場（現：農業総合センター畜産研究所）が会津地方の飼育農家から純粋種を譲り受け、調査した結果、県固有の品種であることが判明。その後、純粋種の維持増殖が図られ、肉用鶏としての交配様式を確立しました。
そんな歴史を持つ会津地鶏について、生産者である株式会社会津地鶏ネット代表取締役の酒井　毅さんは「森や林に囲まれ、川には清澄な水が流れ、田畑がある、そんな日本の原風景の一部に鶏がいました。そのような自然と共生しつつ成り立つ生活や文化を守っていきたい」と、会津地鶏を育てる意義を語ります。

もうひとつ、会津地鶏には重要な役割があります。それは、観光振興の起爆剤になるということです。観光にとって「食」は、非常に大きな要素のひとつです。「旅行で訪れた人が会津地鶏を食べて、その味が忘れられずリピーターとしてまた会津に来てくれる。そういう吸引力をこの鶏は持っていると信じています。だから、手抜きなんてひとつもできないのです。それが、会津という名を冠した鶏を飼育する者に課された使命だと思っています」とその口調に覚悟がにじみます。

地鶏は、飼育期間が75日以上と定められていますが、会津地鶏は、その倍の１００～１４０日をかけて平飼いで飼育されています。時間をかけて、じっくりと肉に味わいを蓄えていくのです。与える飼料にも大きな特徴があります。「専門業者と栄養成分の評価等を重ね、米を10％混ぜた配合飼料を与えています。そうすることで、肉の生臭さが低減され、鼻に抜ける香りがとてもよくなります。また、うま味成分のイノシン酸が多いという県などによる研究結果も出ています。味も香りも一級品であることは折り紙付きです」と酒井さん。

酒井さんが会津地鶏を飼育しているのは、会津若松市内から国道49号線で郊外を抜けた猪苗代湖にほど近い場所です。すぐ近くには、戊辰戦争の古戦場が広がっています。会津地鶏もまた、そのような歴史の“目撃者”だったことは、想像に難くありません

「会津でものづくりをするなら、会津の歴史や文化をしっかり勉強しなさいと、まわりの人たちからよく言われてきました。ひとり一人が歴史と伝統を守る人であれ、と言っていたのかもしれません」と酒井さん。会津若松市内には、夜な夜な提灯に火をともす老舗居酒屋が何軒もあります。「そんなお店のカウンターで一献傾けるとき、きっと手元には会津地鶏の焼き鳥があることでしょう。そんなときは、ぜひ、会津地鶏でしか味わうことができないロマンに身をまかせ、ふけゆく夜を楽しんでください。」
焼いてよし、煮てよし、揚げても蒸してもよしと、どんな料理にも合う会津地鶏をその歴史を噛みしめながら召し上がってもらいたい。