Vol.13
奥会津只見 目黒麹店 楽天市場店
七代目 目黒大地
ネットの中で“行列のできる老舗”―
もの作りへのこだわりとぬくもりがあふれる
こうじ、みそ、らーめん(生麺)が主力商品
創業120余年、秘境の地の老舗がオープンさせたオンラインストア
福島県南会津郡の只見町は、新潟県と接する山間部でわが国有数の豪雪地帯でもあり、深山に生い茂る樹海、水量豊富な清流、日本を代表する規模のダム湖など、そうそうたる大自然を擁しています。そんな秘境の町で人々の食生活を支えてきた目黒麹店は、創業明治32(1899)年、120余年の長きに渡り続く老舗中の老舗。その七代目、目黒大地さんが商品のオンライン販売を始めたのは、平成27(2015)年のこと。創業以来初の取り組みでした。
「はじめは自社サイトに販売機能を持たせただけのもので、売上自体は微々たるものでした」と語る大地さん。やがて地域が過疎化するなかで、店舗販売だけでは先細っていくことを懸念し、オンラインストアの重要性を感じるようになります。そして、意を決して大手のECショッピングモールに出店したのが令和元(2019)年のこと。
「どうせやるなら結果を出したかったし、社長(大地さんの父)の厳しい視線も非常に気になっていましたので(笑)」と大地さん。ここから、目黒麹店におけるネット販売が大きく動き出すことになります。
注文が途絶えぬ2種類から選べる上質なこうじ
目黒麹店の主力商品は、こうじ、みそ、らーめん(生麺)です。
かつて、みそは各家庭で当たり前のように仕込んでいました。大豆を大鍋で煮て、買ってきたこうじとお塩をあわせて1年分のみそを作ります。目黒麹店では創業当初から、この時に使うこうじを販売してきました。今では一般家庭でみそを作る人はほとんどいなくなりましたが、それでも目黒麹店では、オンラインストアでの商品購入者の4割はこうじを買う人で占められています。「30~50代の女性が多いですね。甘酒や塩こうじを作ったり、趣味でみそを仕込んだりする方にお買い求めいただいています」と大地さん。
目黒麹店のこうじ商品は2種類。甘酒やこうじ水、塩こうじ、漬物などに幅広く使えるものと、みそ作り専用のものの2種類から好きな方を選べます。前者は、より甘味が出て、出来栄えが白くきれいになる菌を使い、後者は、半年から1年熟成させるので、大豆の分解力の強い菌を使っています。「普通のお店だと、1種類のこうじを販売することがほとんどですが、うちでは、菌を扱う職人としてこうした点にもこだわっています」という大地さん。「どちらのタイプも、米の一粒一粒に菌がしっかりと繁殖するように何度も何度も手入れを行い、上質なこうじに仕上げています」とのこと。
ただし、製造に手間暇がかかるうえ注文が多く、商品発送までに日数を要したり、時季によっては品切れになったりすることがあります。「オンラインストアの向こうに、お客様が行列を成してお待ちいただいているイメージです。良いものだけをお届けしたいという気持ちが強いのですが、どうしてもその分、お待たせして申し訳なく思うこともよくあります」とその心境を正直に話していただけました。
創業以来、添加物一切なしを貫くみそは、素朴でほっとする味
みそ作りについても、並々ならぬこだわりを見せています。「市販されている味噌は、その多くが、酒精(アルコール)をはじめいくつかの添加物が入っているのが一般的ですが、うちの場合、創業以来ずっと、米、大豆、塩しか使わず、添加物は一切なしを貫いています」と語る大地さん。みそは製品になっても発酵が続いていますが、酒精を入れることでそれを抑制して賞味期限が延び、炭酸ガスが出にくくなるため真空包装ができて、大量に供給できるというメリットがあります。
「一方、無添加の良さは、素朴でほっとするような味わいが楽しめること」と大地さんは教えてくれます。「今の時代の流行は、山吹色ですっとした味のみそですが、いったん昔ながらの味を覚えると、これでないとダメという人も多いようです。比較的年配の方に好まれていますが、ときどき若い人にご購入いただくと、妙にうれしくなります」と。
みその仕込みに使う米は、会津産コシヒカリ。それを、仕込みの度に精米して、鮮度の高いうちに使っています。大豆は、福島県を中心に東北産のもの、塩は昔からみそに適したものとして讃岐の塩を使い続けています。
水の良さも特筆すべきです。豪雪地帯の雪解け水がブナの原生林で磨かれて生じた伏流水と、尾瀬を水源とする清澄な只見川の水が、惜しげもなくみその仕込み水として使われています。「しかも、只見町の上流には民家がないため、生活排水が一切入りません。只見町に初めて来た人は、皆さん、水道水のあまりのおいしさにびっくりされます。」
こうした素材の良さを存分に生かした目黒麹店のみそには、リピーターが多いのも特徴的だとか。「うちのみそをお召し上がりいただきながら、只見の大自然に思いを馳せていただき、できればこれをきっかけに、ぜひ、こちらにお越しいただければと思います」と、その思いを語っていただきました。
只見生らーめんは“超多加水麺”でもちもち感バツグン!
なぜ、こうじとみその専門店である目黒麹店がラーメン(生麺)の製造・販売を始めたのでしょうか?―
その発端は、大地さんの祖父の時代にさかのぼります。当時、食の本場、大阪に修行に行った祖父が、かの地の“粉もの文化”に触れて衝撃を受け、なかでも非常においしい生麺と出会い、それを故郷にも広めたいとの思いからスタートしました。
只見は山奥のため生麺を食べる文化がなかったので、当初、家族からは猛反対を受けました。しかし、ちょうどその頃、只見川の上流で、東洋一とうたわれた田子倉ダムの建設工事が最盛期をむかえ、職人や関係者で只見町の人口が爆発的に増えていました。幹線道路には飲食店や飲み屋が次々にオープンして銀座通りと呼ばれ賑わいをみせるなか、大地さんの祖父が製造したラーメンは、飲食店から連日連夜、引き合いがあり、飛ぶように売れていきました。その後、只見町の賑わいは静まっていったものの、地元の飲食店やスーパー、小売店を中心にご当地らーめんとして定着し、製造・販売を続けているのが目黒麹店の只見生らーめんで、こちらも60年の歴史があるロングランの商品です。麺は細麺と太麺、スープは、醬油、みそ、塩など6種類から選べるというものです。
大地さんによると、「オンラインストアでもこうじと並ぶヒット商品として売れています」という只見生らーめん。人気の秘密は、水分量が多い“超多加水麺”である点です。「ふつうは水分量が40%で多加水麺とされますが、うちの麺は約47~50%と他にあまり例を見ないものです。水分量が多いと消費期限はやや短くなるのですが、つるつるとしてコシが強く、もちもち感バツグンの麺になります」とのこと。
大地さんは、地元のブランド食材とコラボした「南郷トマトラーメン」を開発。南郷トマトをスープのベースに加え、麺にも練り込んで商品化し、令和3(2021)年から自分の店舗やオンラインストア、道の駅などで販売を始め、初年度で2万4千食を売る衝撃のデビューを果たしました。
試行錯誤を繰り返したオンラインストア、広告では“空振り”も経験
大手のECショッピングモールに出店して1年と4カ月後、目黒麹店は、同ショッピングモールの上位1%のお店に与えられる月間優良ショップを初めて受賞し、以来、そこから1年間で計5回も同賞を受賞しています。
魅力あふれる商品に恵まれ、なかなか取れない賞を取り、オンラインストアもさぞや順風満帆でここまできたのだろうと思いきや、内情は異なるものでした。
実は、大地さんは、ショッピングモールに出店して1年間、売上が満足に上がらなかったらオンラインストア自体を止める覚悟で臨んでいたのです。
「自分にプレッシャーをかけるためにも、あえて広告費をかけてサイトや商品の宣伝をしましたが、最初は“空振り”(売上効果なし)が続き冷や汗をかきました」という大地さん。どこが悪いのか?データ分析をおこないました。「その結果、みそよりらーめんの広告の方がアクセスが増えることがわかりました。そのらーめんも最初は10食1パッケージで売っていたのですが、お客様のニーズを踏まえて4食1パッケージの商品も投入しました」と当時を振り返ります。
「広告を出すのはお金がかかるので勇気がいることですが、その出稿タイミングにあわせて商品写真やキャッチコピーを差し替えたり、商品を開発したり、クーポンキャンペーンやお買い得イベントを打ったりと、無我夢中で試行錯誤を繰り返しているうちに成果がでてきました。」
このようにオンラインストアが軌道に乗るうえで、大きな後押しとなったことについて、大地さんは次のように語ります。「出店したばかりの頃に参加した、ショッピングモール主催、4回連続の研修会では、商品のPRや集客方法、サイトの改善ノウハウなど、一から十まで教えてもらい目に見えて実力がアップしました。また、同時に参加した他店の出店者とも知り合いができ、そのうちの一人と『南郷トマトラーメン』を共同開発しました。さらに、出店以来、ショッピングモールのコンサルタントが1名付き、サポートしてくれています。この研修会とコンサルタントの存在がなければ、今のオンラインショップはなかったと思っています。」
ここがすごい!!
製造に一切の妥協なし!商品・お客様に真摯に向き合う店舗様
誠実に商品・お客様に向き合い、画像の改善やお得な企画を実施するなどの工夫を続けており、今後更なる成長が期待される店舗様です!
お客様へのメッセージ
「只見町にある目黒麹店は、地元愛にあふれるお店です。小規模だからこそ、効率性を第一優先にするのではなく、素材にこだわり、手間暇をかけてでも目の届く範囲で納得のいくもの作りを行い、お客様にご満足いただけるものを提供し続けてきました。もちろんそれは、オンラインストアでも変わりません。これからも、手作りのこだわりとぬくもりあふれる商品を、ぜひ、よろしくお願いします。」