Vol.8
魚のおんちゃま 楽天市場店
オンラインストア・魚のおんちゃま店長
大橋大善
夢を形にするオンラインストア
自社初のBtoC事業を立ち上げ
若手のリーダー格としても注目される存在に
30代前半の若者が仕切り、わずか4年で軌道に乗せ躍進
大手のインターネットショッピングモールに、オンラインストア・魚のおんちゃまがオープンしたのは2018(平成30)年のこと。その後、急成長し、2021(令和3)年の12月には、過去最高の売上げをたたき出します。わずか4年足らずで、親会社の年間売上げにおける3割を占めるまでになりました。
その魚のおんちゃまの店長を務めるのは、若干32歳(2022(令和4)年1月時点)の高橋大善(ひろよし)さんです。福島県は相馬で、代々続く漁業関係の仕事をする家庭に生まれ育った高橋さん。一度は音楽の道を志し、10代後半から20代半ばまで東京で暮らしていました。しかし、地元で自分を試してみたいという思いが徐々に募り、Uターンします。海を目の前にして育った高橋さん。漁師になった友人も多く、「どうせなら勝手知ったる世界でやってみたいと思った」とのことです。
魚のおんちゃまの親会社である株式会社センシン食品は親族経営で、高橋さんのお父さんが代表を務めています。鮮度の高い魚を仕入れて、寿司屋などの飲食店に加工し卸している親会社は、BtoB事業が中心の会社でした。高橋さんがUターンして間もなく、この会社で未着手だったECによる一般消費者への販売事業を立ち上げます。プロの飲食業者向けの経験とノウハウを活かして、一般向けに商品を製造・販売したいと考えたのです。
「最初の頃、親父は、『こいつ、何かやってるな』くらいに遠巻きで見ていたのですが、売上げが大きくなるにつれて、自社初めてのBtoC事業として認めてくれるようになりました。」と高橋さん。
活かされた情報誌制作の経験、写真撮影からページデザインまですべて自分で行う
魚のおんちゃまのWebサイトは、シンプルかつ非常に洗練されたデザインで、それが扱う商品の上質さを伝えることに大きく寄与しています。それでいて、魚フライや焼き魚などの写真は、見ているそばからかぶりつきたくなるほど、シズル感にあふれています。
実は、このオンラインストアは、写真撮影、ページデザイン、コピーワークからサイト構築に至るまで、すべて高橋さんが一人でやっています。
デザインは素人同然だった高橋さんが、Uターン直後から地元の若手漁師らとともに取り組んだのが、漁業と水産物の魅力を発信する『そうま食べる通信』という情報誌の制作でした。県外でも多くの読者に親しまれ、漁業復興に大きく貢献したことで今も語り草になっている『そうま食べる通信』で、高橋さんは5年間、一貫して写真撮影と誌面デザインを担当しました。「ここで、腕を磨いた」という高橋さん。内容もさることながら、漁業の魅力をハイセンスで格好よく伝える誌面は、今も多くの人の記憶に残っています。
成功のカギは、“エビデンスがある品質”を伝えること
オンラインストアの制作では、デザインとともにコンテンツの作り方についても、かなり勉強したという高橋さん。心掛けているのは、「“エビデンスがある品質”を伝えること」だそうです。
例えば、魚のおんちゃまのヒット商品である「白身魚 タラフライ」や「至福のアジフライ」は、プロトン凍結機による特殊冷凍のワンフローズン加工です。
魚肉の細胞内の水分は凍らせると膨張して細胞壁を破り、解凍したときに旨味が逃げ出し水分でベチャッとしてしまいます。ところがプロトン凍結機という特殊な冷凍機では、細胞内の水の分子を電磁波で整列させ、凍らせても膨張しないので細胞壁が壊れにくくなるのです。
また、魚の加工品は、大量生産の場合、通常切り身にしたり揚げたりする製造工程で、複数回冷凍と解凍が繰り返されますが、魚のおんちゃまでは、生で仕入れた魚をそのまま加工して、凍らせるのは特殊冷凍1回だけ、すなわちワンフローズン加工によって味と鮮度が保たれているのです。このように、「何故うまいのか、そのエビデンスをしっかり伝えることで、お客様に納得してお買い求めいただきたいのです」と高橋さん。「魚フライの冷凍ものといえば、お弁当のおかずのひとつというイメージを覆したいという秘かな野望もありました(笑)。」
ここがすごい!!
商品と見せ方へのこだわりでお客様を魅了する銘店
特に商品へのこだわりが強く、新鮮な食材を商品にするまでの流れを動画にまとめるほど!高橋さんの商品は美味しいだけでなく、食材へのありがたみや、製造者の商品に込める愛情が伝わる逸品です。
バンド経験が活きた、高橋さんのオンラインストアでの"セッション"にファン急増中。ぜひ一度お試しください。
夢があって、仲間がいて、やりたいことを全力でやる! オンラインストアはバンドと同じ
魚のおんちゃまでは、「漁師モーニング漬け」という、つぶ貝とメカブなどを漬け込んだ、ご飯にぶっかける惣菜も販売しています。これは、高橋さんの従兄の漁師から教わった、手間いらずなのにとびきりうまい“漁師飯”をヒントに商品化したものです。忙しい若い人たちに、密かに人気の商品となっています。
「新商品を企画するときはマーケットリサーチを繰り返し行い、市場規模や先行商品、ターゲット像、食べるシーンなどを分析して商品を作っていきます。そうすることで、作り手の思いを押し付けるのではなく、マーケットインで新たな価値を提供することができ、値下げ競争をしなくてもよくなるのです。」
このような知識と実践力を高橋さんは、インターネットショッピングモールが出店事業者向けに行う勉強会に積極的に参加するなどして、身に付けていきました。今では、インターネットショッピングモール内でも若手のリーダー格として、他店舗の育成にも意識を向けるなど、頼もしい存在になっています。
東京にいた20代の頃、高橋さんは数年間、バンド活動に明け暮れていました。「日々、食べるものにも困るほどひもじい生活をしていたけれど、仲間がいて、夢があって楽しかった」という高橋さん。「帰郷して6年間、情報誌作りやEC事業で突っ走ってきて、実際は順風満帆とは言い難い時期もあったけれど、ようやく最近、これで“メシが食える”と実感できるようになりました。夢があって、生産体制を拡大して新たな仲間もできて、やりたいことを全力でやる。これってバンドと同じだなって、最近思っています。」
高橋さんは今、自分の飲食店を出すという新たな夢に向かって具体的に動き出しています。「本当にいろいろやってきてよかったな、すべてがつながっているんだなと思います。オンラインストアをやっていなかったら、飲食店を持つということも考えられなかったと思います」と語ってくれました。
お客様へのメッセージ
「魚のおんちゃまの主力商品は、冷凍してストックされた原材料ではなく、その時々に水揚げされた新鮮な魚で作っています。タラやアジのように人気商品でも漁獲時期が短い魚も多く、すぐに売り切れてしまうこともあります。そんな時は、楽しみにしていただいている方々に申し訳なく思います。しかしその分、こだわり抜いて、お客様に本当においしいと思っていただける商品だけを作っているという自負がありますので、どうかご容赦いただければと思っています。」