ふくしまが誇る逸品たち | もも

もも

ふくしまのももがおいしい理由
●ももは、もともと暖地を好む果物であり、主産地の県北地方は盆地性の気候で、夏は暑く強い日射しが降り注ぐことから、ももの樹の生育に適し、甘さをたっぷり含んだおいしいももができます。
●果実に袋をかけない栽培方法で、太陽の光をたっぷり受けて、色付きが良く、より甘いももに育ちます。
●産地に継承された技で、より大きくおいしいももへ進化し続けています。
●主力品種の「あかつき」をはじめ、選び抜かれた食味の良い品種のももがたくさん生産され、夏から秋にかけて、おいしいももを楽しむことができます。

主な品種の特徴

はつひめ

福島県が育成したオリジナル品種です。早生種としては果実が大きく、着色、甘さに優れ、食味も良好です。

ふくあかり

福島県が育成したオリジナル品種です。早生種としては果実が大きく、着色が良く多汁で甘みが強い品種です。

あかつき

県内のもも生産量の約半分を占める県を代表する品種です。肉質がち密で糖度が高く、最上級の食味を持ちます。

まどか

「あかつき」の後に出荷される大玉で着色が良く甘みが強い品種です。

川中島白桃

「あかつき」の次に多く栽培されている大玉の品種です。着色が優れ、甘く、しっかりした果肉を持ち日持ちも良好です。

ゆうぞら

滑らかな果肉と上品な甘味で、極上の食味を持つ品種です。外観もきれいで一度食べれば、ファンになることまちがいなし。

無袋で育てる福島県民の誇り、
あかつき

福島県は全国2位(令和５年産農林水産統計）の生産量を誇る桃の主産地です。その中でも主力品種の『あかつき』は、桃の品種としては全国で最も生産量が多く、しかもその半分以上が福島県で生産されています。
『あかつき』は果実の大きさは中位で玉ぞろいが良く、着色も良好で、なによりも肉質が緻密で、果汁と甘みが多く、食味の良い品種です。
しかし、これほどまでに存在感を放つ『あかつき』が、誕生さえも危ぶまれた桃であったことをご存じでしょうか？

時は昭和27（1952）年にさかのぼります。国の研究機関でのちに『あかつき』になる品種が、「白桃」と「白鳳」を掛け合わせて産声をあげました。昭和35（1960）年から福島県をはじめとする12の県で、「系統適応性検定試験」と呼ばれる試験栽培が行われました。糖度や肉質は素晴らしかったものの、サイズが200gに満たない小玉止まりだったため、11年後に系統試験は中止されてしまいました。
その後、福島県では現地の農家の協力を得て、独自に試験を継続して試行錯誤を積み重ね、大玉化に成功。昭和54（1979）年、ついに『あかつき』として品種登録されたのです。国が育成してから27年後、試験栽培期間だけでも実に19年に及ぶ年月を経て、ようやく日の目を見ることになりました。

福島県民の誇りともいえる『あかつき』について福島県農業総合センター果樹研究所所長にお話を伺いました。
「桃の品種の多くは、病害虫等から実を守り、着色を良くするために、紙の袋を桃にかけて栽培されます。しかし、『あかつき』は、袋をかけない無袋栽培で育てられることが多い品種です。桃は、生育期間中に浴びる日光が多い方が、糖度が高くなります。その分、病害虫対策として圃場を清潔に保つなど多くの手間がかかったり、毎日、充分に気をつけて生育状況を観察する必要があるため、農家さんの苦労が多い品種です。そのような農家さんの努力があってこそ、毎年、甘味の非常に強い桃を消費者の皆様にお届けすることができるのです。

このようにして、『あかつき』は、福島県を代表する桃としての地位を盤石なものとしていったのです。また、『あかつき』を中心として、近年の福島の桃の栽培技術が確立されてきました。その後、いくつかの桃の新品種を開発してきましたが、その多くが『あかつき』の良さを引き継ぐものとなっています。そのような意味でも、『あかつき』は福島の桃の中心的な存在なのです。」

『あかつき』の名は、五穀豊穣を願い福島市で江戸時代から続く祭り、「信夫山暁（あかつき）まいり」に由来しています。このことからも、大きな期待を背負って世に送り出されたことがうかがい知れます。そして、その期待に応えるように、堂々と日本を代表するトップブランドとなりました。その可能性を信じ、試験栽培を先導した県の機関である果樹研究所や、栽培に協力した生産者たちの並々ならぬ強い意志があればこそのことでした。
果実に香りが感じられるようになり、軽く触ると表面に柔らかみを感じるようになれば食べ頃です。７月から９月まで長い期間楽しめる、おいしいふくしまの桃をぜひ、ご賞味ください。

透過式光センサーでの選果

桑折町にあるJAふくしま未来の共選場では７月から９月末にかけて、桃農家さんが手塩にかけて育てた桃がぞくぞくと搬入されます。
搬入された桃は「透過式光センサー」を通して、糖度や大きさ、着色などで選別。丁寧に箱詰めされて全国へ出荷されます。

果樹園にあふれる祝福の光と収穫の喜び

令和５年７月下旬、桃の収穫最盛期の猛暑日、福島市飯坂町の株式会社菱沼農園を訪問しました。
菱沼農園さんでは、桃を中心に、りんご、さくらんぼなどの生産と果物を使った加工品の販売を行っています。
農園の果樹の下には、桃の着色を促進させる反射シートが敷き詰められ、そこで反射した太陽の光が、桃の木々や葉っぱ、そして果実をきらきらと輝かせていました。
「太陽は自然のエネルギーの源泉です。それをできるだけ多く浴びせることで、甘さを最大限に引き出しています。肉厚で絹のようななめらかな食感を有し、あふれ出る果汁など、あかつきには、桃の魅力がたっぷり詰まっています」と饒舌に語るのは、菱沼農園代表の菱沼健一さん。桃作り５０年に及ぶベテラン中のベテランです。「隣町の桑折町で生産される「あかつき」は、毎年、皇室にも献上されています。もちろん、うちでもあかつきは、人気ナンバー１の桃です」と、「あかつき」について語る言葉はとどまるところを知りません。「毎年、夏になったら、ぜひ、あかつきを思い出し、そのおいしさを楽しんでみてください」。