凍み餅とは、1~2月頃に、餅を軒先などに吊るして寒風に晒し、氷結、乾燥させて作る保存食です。東北地方の農家に伝わる伝統食で、福島県では会津地方や阿武隈山系のあたりで作られ、その発祥は、江戸時代中期にさかのぼるともいわれています。餅が凍りやすいように、よもぎや山ごぼうの葉を練り込んだ餅で作られることが多く、自然食や健康食としての価値も見直されるようになっています。
冬になると大雪に見舞われる喜多方市で、約400年も続く米農家・福島農場を営む福島修一さんの家でも、凍み餅を作るという文化は受け継がれてきました。
凍み餅そのものは、県内の道の駅やJAの直売所、観光物産館、一部の食料品店、最近ではネットでも手軽に購入することができます。一般的には、5、6時間かけて水で戻したものを、お好みで焼いたり蒸したりして食べます。しかし、福島さんは、この手間を省き、開封すればすぐに食べられるように、凍み餅を揚げたおかきをパッケージングして6次化商品として生産・販売しています。
「平成5年の大凶作のときから生産を始めました。おかげさまで好評で、今まで売れ続けてきました。」と語る福島さん。「農家は作物がとれたときだけ販売するものがあるという状態ですが、それだけでは経営的に厳しいので、通年で販売できるものを生産したいと思って始めました。」
福島さんの凍み餅は、健康志向を意識して玄米を主原料にして作られています。それによってお米本来の味が楽しめるとともに、揚げたときの油切れが良いのでべたつかなくなります。「食べやすいように一口大にカットされた凍み餅を、相性の良い米油で常温から揚げ、醤油味や味噌味、にんにく入り、唐辛子をまぶした辛口、砂糖醤油で味付けした甘口などの商品を作っています。一度食べ出したら止まらないおいしさです。」と福島さん。常温から揚げることで、時間はかかりますが、中までカリっと仕上がります。
福島農場では、米だけでなく野菜の生産や畜産も手がけ、稲わらを牛に食べさせ、糞を有機肥料として活用する循環型農業に取組んでいます。さらに、農泊も行うなど、多角的に営農しています。「いろんなことをやっていると、今まで知らなかった人と新たに出会う機会が増えます。そのときに感じる『わくわく、ドキドキ感』がボケ防止の特効薬です。」と“元気の源”について語ってくれました。そうやって、充実した農業を続け、お客様においしいものをお届けできることが福島さんの誇りでもあるのです。